ウィンチ グリスアップ

技術共有-ウインチのグリスアップについて

 セール操作で用いるウインチですが、一年か二年に一回は整備が必要となります。メンテナンス頻度が低く忘れがちなので、このページで復習しておきましょう。

1. グリスアップのおおまかな流れ

(1.1)整備手順

①分解 >> ②部品の清掃 >> ③グリス塗り、組み立て

(1.2)使うもの

グリス(harken winch grease)ウエス(キムタオル)歯ブラシ
オイル(lewmar race lube)新聞紙プラスドライバー(No.2)
CRC6-66マスカーマイナスドライバー
パーツクリーナー使い捨て手袋ラジオペンチ

2. 構成部品

①ねじ ×4⑮スナップリング
②フィーダーアーム⑯段付きワッシャー
③ねじ ×3
④コーン上部⑱ベース
⑤ストリッパーリング⑲ボルト ×3
⑥コーン下部⑳ラチェットギア
⑦ドラム㉑ステム
⑧軸 ×2㉒爪ギア
⑨ローラーベアリング㉓ドラムワッシャー
⑩ラチェットギア㉔ローラーベアリング
⑪ねじりばね ×2㉕主軸
⑫爪 ×2㉖コレット ×2
⑬爪ギア㉗トップキャップ
⑭ローラーベアリング㉘ベース

3. 整備手順

(3.1)分解

ばねやスプリングピンは作業中に飛ばしやすいので注意。部品の紛失防止として、作業前にライフラインにマスカーを貼り付けたり、ブルーシートをかけたりするとよい。

1 : ねじ①を外してトップキャップ㉗をとる。
2 : コレット㉖を外し、フィーダーアーム②と主軸㉕を取り出す。
3 : ねじ③を外し、コーンとストリッパーリング④⑤⑥を取り出す。
4 : ドラム⑦を引き抜き、ベアリング㉓とドラムワッシャー㉔を取り出す。
5 : マイナスドライバーで軸⑧を引き抜き、2組のラチェット(⑨⑩⑪⑫⑬⑯, ⑨⑳⑪⑫㉒⑯)を取り出す。
6 : ボルト⑲を外し、ステム㉑を外す。
7 : スナップリング⑮を外し、ベアリング⑭を取り出す。

(3.2)清掃

 パーツクリーナーとウエスを使い、部品から古いグリスと汚れを取る。

(3.3)組み立て

 ラチェット部分にオイルを、軸・ベアリング・歯車の噛み合い部にグリスを塗りながら組み立てる。
※固まったグリスにくっついて爪が起きなくなりラチェットが空回りすることを防ぐために使い分けている。
 ※オイルをグリスで代用する場合は、塗る量を減らして爪が倒れる位置にグリスがたまらないようにする。

1 : ベアリング⑭をステム㉑に入れ、スナップリング⑮をはめる。
2 : ⑭⑮㉑をボルト⑲でベース㉘に固定する。
3 : 二組のラチェットを組み立てる。(⑨⑩⑪⑫⑬⑯, ⑨⑳⑪⑫㉒⑯)
  ラチェットの爪⑫が接触する部分にはオイルを使う。
  軸⑧、ベアリング⑨にグリスを塗る。
4 : 二組のラチェット(⑨⑩⑪⑫⑬⑯, ⑨⑳⑪⑫㉒⑯)をベースの上に乗せ、軸⑧を挿して固定する。
  軸と歯車の噛み合い部にグリスを塗る。
5 : ドラムをかぶせる。
6 : コーンとストリッパーリング④⑤⑥をドラムの上に乗せ、ねじ③で固定する。
7 : フィーダーアーム②をかぶせる。
  このとき、②の円筒部分の外面(④⑤⑥との接触部分)にCRC6-66を吹いておく。
  アームの向きをストリッパーリングの突起の向きにそろえておく。
8 : コレット㉖をはめる。
ウインチハンドルで主軸㉕を持ち上げて主軸の溝とステムの穴の高さそろえるとはめやすい。
9 : トップキャップ㉗をかぶせ、ねじ①を締める。
10 : ウインチハンドルを時計回りと反時計回りの両方に回してグリスをなじませる。

参考

[1] Lewmar Ltd, 「B2304 Issue 6 Winch Service Manual Standard and Self Tailing Models 6 to 66」, 2005
[2] P2 Marine, Lewmar Wavegrip 52/56 Winch Parts, https://www.p2marine.com/lewmar-wavegrip-52-56-winch-parts, 2024/02/21参照

スピンネーカー用ウインチのグリスアップ

1. おおまかな流れ

(1.1)整備手順

①分解 >> ②部品の清掃 >> ③グリス塗り、組み立て

(1.2)使うもの

グリス(harken winch grease)マスカーゴムハンマー
オイル(lewmar race lube)新聞紙マイナスドライバー
パーツクリーナーゴミ袋精密マイナスドライバー
ウエス(キムタオル)歯ブラシラジオペンチ
使い捨て手袋スパナ(13mm)

2. 構成部品

① ドラム⑧ 六角ボルト ×5⑮ 爪ギア
② キャップ⑨ ステム⑯ 爪 ×2
③ 爪 ×2⑩ スナップリング⑰ ねじりばね ×2
④ ねじりばね ×2⑪ 主軸⑱ ラチェットギア
⑤ スナップリング⑫ 軸⑲ ワッシャー
⑥ ベアリングa ×2⑬ ベアリングb⑳ スプリングピン ×2
⑦ ドラムワッシャ⑭ ベアリングc㉑ ベース

3. 整備手順

(3.1)分解

※ばねやスプリングピンは作業中に飛ばしやすいので注意。作業前にライフラインにマスカーを貼り付けると部品の紛失防止になる。

1 : スナップリング⑤を外す。写真(右上)の矢印のように精密マイナスドライバーでリングを回転しないように抑え、リングの螺旋の先端を接線方向に押すと開きやすい。
2 : ドラムを引き抜き、キャップ②、爪③、ばね④、を取り出す。
3 : 六角ボルト⑧を外す。(ステム⑨とベース㉑はスプリングピン⑳でつながっているのでまだ外れない)
4 : ゴムハンマーでステム上部を水平方向にたたき、ステム⑨とベース㉑の間に隙間をつくる。
隙間にマイナスドライバーを差し込み、ステム⑨をベース㉑から外す。
5 : ベアリング⑬⑭、ギア⑮⑱、爪⑯、ばね⑰、ワッシャー⑲を取り出す。
7 : スナップリング⑩を外す。
8 : ステム⑨から軸⑪を引き抜く。

(3.2)部品の掃除

パーツクリーナーとウエスを使い、部品から古いグリスと汚れを取る。

(3.3)組み立て

 ラチェット部分にオイルを、軸・ベアリング・歯車の噛み合い部にグリスを塗りながら組み立てる。
※固まったグリスにくっついて爪が起きなくなりラチェットが空回りすることがあるため、ラチェットにはオイルを使う。
※オイルをグリスで代用する場合は、塗る量を減らして爪が倒れる位置にグリスがたまらないようにする。

1 : ベアリング⑬⑭、ギア⑮⑱、爪⑯、ばね⑰を組み立てる。
  ラチェット部分(爪⑯の円柱面、歯車⑱の内側面)にオイルを挿す。
  ベアリング⑬⑭にグリスを塗る。
2 : ステム⑨の内側面、軸⑪、軸⑫にグリスを塗る。
  ステム⑨に軸⑪を差し込み、スナップリング⑩をはめ込む。
3 : ベース㉑の上にワッシャー⑲をのせ、その上に1で組み立てた⑬⑭⑮⑯⑰⑱をのせる。
  2で組み立てた⑨⑩⑪⑫をかぶせる。
4 : ゴムハンマーで軸⑫とスプリングピン⑳のあるところ(赤丸で囲まれた部分)をたたき、ステム⑨とベース㉑を密着させる。
5 : 六角ボルト⑧を締め、ベアリング⑥、ドラムワッシャ⑦を取り付ける。
  ベアリング⑥にグリスを塗る。
6 : ドラム①の歯車にグリスを塗り、5にかぶせる。
7 : 爪③の円柱面にグリスを塗り、ばね④と組み合わせてドラムに取り付ける。
8 : キャップ②をかぶせ、スナップリング⑤をはめる。
9 : ウインチを時計回りと反時計回りの両方に回してグリスをなじませる。

参考

[1] Lewmar Ltd, 「B2304 Issue 6 Winch Service Manual Standard and Self Tailing Models 6 to 66」, 2005
[2] Lewmar Ltd, Winch Parts Manual Volume 10, 2002