技術共有 -操船技術-定常航行

ヨットに乗る前に、ヨットの動く原理を勉強しましょう!
風の力だけでヨットが進むことに疑問を持つ方も多いかもしれません。ヨットの航行には、風上に進む場合と風下に進む場合の2通りありますが、全く原理が異なります。後ろから風を受けて風下に進める場合は、ただ単に風の抵抗を受けて走る帆掛け船と変わりません。ところが、前から風を受けて風上に進める場合、揚力によって何と風速以上の速度を出すことができます。揚力は、翼やセール(帆)のようなカーブを持った面に沿って空気が流れる時に生じます。飛行機でいうと翼に風を受けて発生した揚力を浮力に変えているように、ヨットでは揚力から推進力を得ているのです。ただし、揚力のベクトルは必ずしも推進方向とは一致せず、推進方向の成分と風下方向の成分に分けられます。ヨットの船底がセンターボード(キール)といって平たく突き出した構造になっているのは、この風下方向の成分を打消しつつ、推進方向の成分を活かして進むためなのです。セールとセンターボードの仕組みによって、我々ヨット乗りは、確かな技術と風さえあれば自由自在にヨットを進めることができます!
走り方
クルーザーヨットの場合、エンジンが付いていて、港内では機走(エンジンで走る)、沖合に出れば帆走(帆で走る)に切り替えます。機帆走といって、エンジンと帆の両方を使って走る方法もあります。帆走時は風の向きと進みたい方向によって以下の4つの状態があります。

(出典:石井正行(1992)「ビギナーのためのヨット入門」舵社)
クロースホールド
斜め前から風を受けて帆走している状態のことを指します。前から風を受ける場合、ヨットは真正面には進めず、通常45°程度の角度を付けながら進みます。クロースホールドは出来るだけ風上に向かって走る方法で、相対的に風速と船速が合わさって最もスピード感が感じられます!また、風を受けて船体が大きく傾く(ヒール)ので迫力もあります。
ランニング
真後ろから風を受けて帆走している状態のことを指します。単純に風の抵抗を受けて走るので一見簡単そうですが、実は一番注意する必要があります。ヨットは右舷側と左舷側から風を受ける場合で帆の張る方向が反対になります。真後ろから風を受ける場合でも、どちらか一方に帆を張りますが、少し油断すると自然に風の向きが変わり、帆が反対舷まで一気に振り切れるワイルドジャイブという現象が起こりえます。特にランニングは、風と全く同じ方向に進むので、体感的にはほとんど風を感じず、風の方向を掴みにくい状態と言えます。
ウインドアビーム
真横から風を受けて帆走している状態のことを指します。
クオーター
斜め後ろから風を受けて帆走している状態のことを指します。
旋回(方向転換)
帆走時に方向転換するには、2通りの方法があります。
タッキング
風上に向かって進みながら方向転換する方法を指します。舵を切りながら徐々にメインセールを中心に合わせ、反対舷から風を受けたタイミングで一気に切り替えます。ジブセールも同様に張り替えます。ポイントは十分にスピードを付けた上で、速度が失われるまでに素早く切り替えることです。技大艇は7トンもの重量があり、一度止まってしまうと軌道に乗せるまでに苦労します。
ジャイビング
風下に向かって進みながら方向転換する方法を指します。ジャイビングも基本的にはタッキングと同様の手順で行います。ただし、ランニングの状態を挟むのでワイルドジャイブが発生するリスクがあり、注意する必要があります。
参考
[1] 石井正行(1992)「ビギナーのためのヨット入門」舵社